※ 「今月の衛星画像」 2010年のテーマは 境界 です ※

Vol.12-05    2010年05月号

ヨルダン川

このページはブロードバンドを使ってご覧ください画像はWeb用に画質を落としています
このページは、1024×768以上の画面でごらんください。画面が小さいと写真の配列位置がこわれます。

「今月の衛星画像」で使用したデータの中には、「研究利用目的配布」で購入したデータが含まれています。
ADEOS衛星の場合、データ所有および提供は宇宙開発事業団です。MOS,MOS-1bの場合、データ所有および提供は宇宙開発事業団です。
LANDSATの場合、データ所有は米国政府、提供はSpace Imaging(R)/宇宙開発事業団です。
SPOTの場合、COPYRIGHT CNES、提供はSPOT(R)/宇宙開発事業団 です。
また、メリーランド大学のアーカイブデータを使用することもあります。

「今月の衛星画像」バックナンバーを見る

「今月の地理写真」バックナンバーを見る


 2010年のテーマは、「境界」です。衛星画像を使って、世界の「境界」を見てまわりましょう。


※写真や画像の引用に関する問い合わせは、こちらのリンク先ページをご覧下さい。


 ヨルダン川はまさに境界を流れる川です。この川の東側に広がる農地のことは、ずいぶん前の「今月の衛星画像」であつかいました。今回は、ヨルダン川をはさんだ東西の対比を見てみたいと思います。下の地図は、1925年に出されたものです。もちろん、イスラエルは載っていません。この地図には、ガリラヤ湖から死海の北岸までが描かれています。ヨルダン渓谷の北端に位置するガリラヤ湖(Sea of Galilee)は、ローマ帝国統治時代にはティベリアス湖とよばれ、またヘブライ語では竪琴の形状に似ることからこれを意味するキレネット湖ともよばれます。この湖の北には、1950年代までフラ湖(Lake Hula、長さ5.3km、幅4.4km、面積12~14km2、水深1.5m(夏)~3m(冬))が存在しました(地図を参照)、現在は周辺の湿地とともに排水工事が行われほとんどが農地などに変わりわずかに湿地が残るだけです。画像1は、北緯32°27′、東経35°34′付近を中心としたヨルダン渓谷北部の画像です。中央を北から南(画像では上から下)へ流れるのがヨルダン川で、画像の向かって左がいわゆる「ヨルダン川西岸地区」です。ヨルダン川を境にして、農場の規模の違いは一目瞭然。水資源の偏り(というか貴重なヨルダン川の水の使われ方)もまたご覧の通りです。現在のヨルダン川は取水の影響です量は極めて少なく、また水質汚染も深刻です。そのあたりのことは、最近のナショナル ジオグラフィック( 2010/4)にも紹介されています。


地図1 1925年発行の地図
画像1 2002年3月のランドサットデータから作成。TM321と8のPanSharpening画像中央を流れる川が、ヨルダン川。西岸地区にはセンターピポッド農場、用水池、養魚場などがみられる。いっぽう東側のヨルダンは個人経営の農場が広がり、エジプト人の出稼ぎ労働者などが働いている。南北に走る幹線道路には、野菜などの買い付けで訪れた外国の大型トラックも行き交う。

画像2 ヨルダン川越しに撮影した西岸地区の農場。用水池に沿って整然と植えられているのはナツメヤシ。丘陵地の上まで水が引かれ農場が拓かれているのはイスラエルのチカラというべきか、ある意味強引なやり方ではある。死海の南、アカバまでこのような農場が切れ目無く続いている。手前のヨルダンではまず見られない風景である。                        2009年 長谷川均撮影。
画像3 これは秘蔵のお宝。1950年代初期に撮影されたヨルダン渓谷北部の写真。画像1の、やや南にあたる。中央の黒い帯がヨルダン川。両側にはリサン層が侵食されてできたバッドランドが広がっている。左上には地中海。写真測量隊が移動の間に気まぐれで撮影したものか?。空中写真用のカメラを横に傾けて撮影されたもの。某国、某所で入手した。