※ 「今月の衛星画像」 2013年のテーマは 世界の森林 です ※

Vol.15
-05    2013年05月号

 燃える森 1988年イエローストーン国立公園の大森林火災

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 2013年のテーマは、「世界の森林」です。衛星画像を使って、世界の「三角州」を見てまわりましょう。


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イエローストーン国立公園は、1872年に設立された世界最古の国立公園である。北アメリカ大陸最大の火山地帯で、地下に大量のマグマが溜まっていることから、近い将来破局的な噴火が起こるのではないかと危惧されている場所でもある。この公園は、ワイオミング州の北西端に位置し8,980 平方kmの広さがありこれは東京都の約4倍くらいの広さになる。広大なこの公園では、森林火災はいわば日常茶飯事で、年平均35件が落雷によるもので6~10件が人為によるものだといわれている。

 アメリカでは1960年代以降、「自然発火の林野火災は生態系の営みの一部である」とされ、火災は森林の再生や植生更新のために必要な自然界のプロセスであるという考えから、「ただちに消火」から「火を利用する森林保全」に変わった。1988年の6月下旬に、公園内の縁辺地で落雷により複数の火災が発生した。国立公園局 National Park Service は、自然発火による火災であるため、消火活動の対象とはぜず燃えるに任せる 対応をとった。いっぽう、イエローストーン国立公園の北にある自然保護区で6月14日に発生した火災は、異常乾燥と強風のため拡がりこの火災に関して当局は7月下旬に消火すべきとの判断を下した。この火災は、イエローストーン国立公園に向かう兆候を見せていなかったが、8月20日、突然南に向かって拡大し始めた。このようにして、1988年の森林大火災はイエローストーンへ拡大していった。

 当初、「燃えるに任せる対応」がとられたが、予想に反して火災は拡がってしまった。これには、イエローストーン国立公園の域外で人為的な理由で発生した火災が対応を難しくした面があったからだ。1988年のイエローストーン国立公園大火災の火災面積の95%は。9件の大規模火災によるも のでこのうち6件は国立公園が出発火したもの、さらにこのうち4件は人為によるものだった。複数の出火とそれらの延焼で始まった大火災は、異常な乾燥と強風のため前例のないものとなった。イエローストーン国立公園の36%が焼け、域外にも拡がり森林火災の総火災面積は、5,623平方kmにおよんだ。
 
 1988年は異常乾燥のためアメリカ各地で72,000件以上(このうち300件が大規模火災)の森林火災が発生したが、「ただちに消火」から「火を利用する森林保全」という考え方は、この後も撤回されることはなかった。


    本ページの記述は次の文献に依りました。
    村上公久(2011)火による森林保全:北米イエローストーン大火災1988以降の森林火災観と対火災施策の変化.聖学院大学論叢、25-1 

 画像1 大森林火災発生前のイエローストーン国立公園 (右上に火災が見える。左の縦線は州界) 1988年7月22日のLANDSAT5 TM RGB:432
 
 画像2 イエローストーン国立公園の東部縁辺に発生した森林火災の拡大画像  1988年7月22日のLANDSAT5 TM RGB:432
  
画像3 大森林火災後のイエローストーン国立公園 黒く見える部分が火災跡地 1988年10月10日のLANDSAT5 TM RGB:432 
画像4 大森林火災後のイエローストーン国立公園 画像3の強調画像 紫色に見える部分が火災跡地 1988年10月10日のLANDSAT5 TM RGB:432