※ 「今月の衛星画像」 2020年のテーマは カラーコンポジットの世界 です ※
 Vol.22
−05    2020年05月号

セント・へレンズ火山 大噴火から40年 植生と氷河の復活を見る

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「今月の衛星画像」で使用したデータの中には、「研究利用目的配布」で購入したデータが含まれています。
ADEOS
衛星の場合、データ所有および提供は宇宙開発事業団です。MOS,MOS-1bの場合、データ所有および提供は宇宙開発事業団です。
LANDSAT
の場合、データ所有は米国政府、提供はSpace Imaging(R)/宇宙開発事業団です。またLANDAT8画像については産総研のサイトも利用しています。
SPOT
の場合、COPYRIGHT CNES、提供はSPOT(R)/宇宙開発事業団 です。
また、メリーランド大学やUSGSのアーカイブデータを使用することもあります。

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 2020年のテーマは カラーコンポジットの世界 です


※写真や画像の引用に関する問い合わせは、こちらのリンク先ページをご覧下さい。


     
 カラーコンポジット画像 というのが今年のテーマです。氷河の抽出を Thermal Infrared False Color で試み、変遷を追跡しようと思いましたが適当な時間間隔の画像がそろわないません。それでこのタイトルです。
 若い学生たちは知らないと思いますが、40年ほど前の1980年5月18日、北アメリ大陸東岸に沿ってのびるカスケード山脈のセント・ヘレンズ山 (Mount St. Helens)で大噴火と山体崩壊が発生しました。その瞬間は様々な方向からとらえられ、多くの動画が残されています。そのため、現在でも容易にその当時の様子を見ることができます。特にUSGS(米国地質調査所)のサイトにあるいくつもの画像や動画は貴重なものです。
 噴火前、セント・ヘレンズ山は標高2950mの標高を持っていましたが、大噴火と山体崩壊で2550mになり、直径1.5kmの蹄鉄型のカルデラが出現しました。このカルデラは北に向かって開口し、崩壊した土砂は岩屑なだれとなって北へ向かって流下しました。一連の出来事で、57人が亡くなり200軒の建物と47橋梁、鉄道と高速道路はそれぞれ、24kmと300kmにわたって破壊されたといわれています。しかし、事前に行われたハザードマップを利用した立入規制などが功を奏し、被害を最小限に押さえ込むことができたとも言われています。
 本ページでは、噴火前、直後、現在 など4時期の画像を用意しました。噴火後の3次期の画像から、山体崩壊後からの現在に至る植生の復活を見ることができるでしょう。
 なお、セント・ヘレンズ山には噴火前から氷河が形成されていました。それは、1958年に発行された地形図にも載っています(図3)。噴火後の1980年以降、ここには非常に新しい氷河が形成されつつあります。その様子は図9の Shortwave Infrared 画像で確認することができます。この氷河に関しては、ウィキペディアにまとめられていますので、次にこれを一部引用します。
『クレーター氷河( Crater Glacier、かつて Tulutson 氷河という名称も用いられていた)は、アメリカ合衆国ワシントン州にあるセント・ヘレンズ山中に存在する、地質学的に若い氷河である。この氷河は1980年の噴火が起きた後、その火口内で新たに形成されたもので、その成長は著しく早かったものの、氷河の存在が一般に知られるようになるまで20年近くかかっている。2004年から2008年にかけての噴火活動以前、氷河の表面はなめらかで氷河洞窟が存在していた。2004年からの噴火と溶岩ドームの成長により、氷河の様相は著しく変化している。これと同時期に、一度は“Tulutson 氷河”と名付けられていたこの氷河に、複数の政府機関が正式名称を決めるべく動き出した。その結果として、現在の“クレーター氷河”が正式名となっている。火山活動にもかかわらず、氷河は拡大を続け2008年の中頃には完全に溶岩ドームを取り囲んでしまった。加えて、新たな氷河(岩もしくは氷)がクレーター氷河の周囲で形成されつつある』 なお、ウィキペディアの記述は、ウィキのページに記された引用文献を参考に書かれていますので、それらを参考にすることを薦めます。

 本ページでは、立正大学地球環境科学部の鈴木厚志教授が撮影された写真を、先生の御厚意でお借りすることができました。13枚に及ぶ現地で撮影された写真を、衛星画像とともに掲載しています。ぜひご覧ください。

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1980年のニュース映像や無線交信を編集したもので、災害の一連の推移がよくわかります。字幕を表示させると緊迫感がよくわかります。
Watch: 1980 eruption of Mount St. Helens, KGW Archives

セント・ヘレンズ山の山体崩壊の動画です。
Mount St. Helens Disintegrates in Enormous Landslide

2005年から2010年のクレータ氷河の成長過程をタイムラプス動画で紹介しています。
Mount St. Helens' Runaway Glacier: A time-lapse video of Crater Glacier

クレータ氷河の成長過程をとらえたDEMのアニメーション動画です。
Time-series of dome and glacier growth at Mount St. Helens, Washington, 2004-2012
   




  
     
       
 図1 図2 北側からみたセント・ヘレンズ山  
立正大学地球環境科学部教授 鈴木厚志先生提供
2012年9月5日 撮影
   
     
 図3 1958年発行のUSGS ARMY MAPに描かれた氷河 図4 セント・ヘレンズ山と周辺地域 Natural Color 1980年9月5日 LANDSAT TM    
図5 Natural Color 1979年8月24日 LANDSAT MSS  噴火前の画像 図6 Natural Color 1980年9月5日 LANDSAT TM
図7  Natural Color 1986年8月26日 LANDSAT TM 図8  Shortwave Infrared 1980年9月5日 LANDSAT OLI



 
  図9 Shortwave Infrared 1980年9月5日 LANDSAT OLI  水色の部分が氷河(あるいは積雪域) 
 
 
調整中 
 図10 4次期の変化を動画で
 
 次に掲載する写真は、立正大学地球環境科学部教授 鈴木厚志先生が撮影された写真です。写真の無断引用はご遠慮ください。引用の許諾は、鈴木厚志先生(atsushi@ris.ac.jp  @は小文字)にお問い合わせください
 11〜21は2012年9月に撮影したものです。17と18はクレーター氷河の説明板。22と23は1995年8月に行ったときの写真。噴火後15年目ですが、熱風で葉や枝や樹皮が焼かれ、爆風の方向へ倒れた木々が沢山あり、まるで剣山の中にいるようでした。19と20はMt. St. Helens Forest Learning Centor内で撮影した説明板です。15年の間に倒木はほぼ取り除かれ、植林が行われました。21は植林した若木が成長し、St. Helensを背景に撮影したものです。撮影地点へは、シアトルを朝4時半頃に車で出発しI-5を南下し、Exit 49から504号線で東へ向かいました。現地へは8時過ぎに到着し、静寂な大自然の中でこれらの写真を撮影しました(鈴木厚志)。 
 
   
           図11 St.Helens 案内板 (Johnston Ridge Obsavatryにて)
                        2012年9月2日 
     図12 Traiの案内 噴火前後の写真
   
          図13  Johnston Ridge からの全容      図14  Johnston Ridge からの拡大 
   
            図15  Johnston Ridge からの拡大(2) 谷の深さは 約50m            図16 山体変化の説明板
   
        図17 溶岩と氷河による侵食の説明板1(左側)      図18 溶岩と氷河による侵食の説明板2(右側) 
   
         図19  噴火後に熱風で倒れた樹木の運び出しの説明板        図20 運び出した樹木の後の植林の説明板
   
            図21 St. Helens Forest Learnning Centorから(奥の山がSt.Helens)      図22 1995年8月撮影のSt.Helens(倒木が沢山残っていた) 
   
  図23 1995年8月撮影のSt.Helensの倒木(爆風の方向へ倒木)