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VOL.11-11  2009年11月

スイスの鉄道風景(2)

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  今回も前回(2009年1月http://bungakubu.kokushikan.ac.jp/chiri/Photo/2009Jan/09Jan.htm)に引きつづき、スイスの鉄道風景をご紹介します。旅の出発地は、スイス最古の町といわれるクール(写真1)。ここからレーティッシュ鉄道のアルブラ線に乗ってサン・モリッツへ、さらにベルニナ線に乗り換えてティラノへと向かう約150kmの旅となります。このうち前半はツェルマット~サン・モリッツを結ぶ「氷河急行」の区間として、また後半は「ベルニナ急行」の区間として知られていますね。いずれもスイスはもちろんヨーロッパを代表する車窓風景の鉄道として世界的に有名です。ちなみに、この沿線は「レーティッシュ鉄道アルブラ線・ベルニナ線と周辺の景観」として、2008年に世界遺産に登録されています。
 クール駅(写真2)を出た列車は、ライン川の最上流部に当たるヒンターライン川とアルブラ川に沿って谷を登っていきます。その先に待ちかまえているのは、アルブラ線最大の見所である、高さ65mの深い峡谷にかかる長さ136mの美しいランドヴァッサー鉄道橋です(写真3)。
 橋を渡った列車はそのまま岩盤の中のトンネルへと入り、本格的な峠越えに入ります。今回紹介するクール~ティラノ間の路線の特徴は、途中にラック式鉄道を使わず、全線粘着式鉄道のみで運行されており、そのために、スパイラル・ループやオメガカーブ・ヘアピンカーブといった急カーブを多用するので、とくに変化に富んだ鉄道風景が車窓に広がることです。列車は右に左に大きくカーブを切りながら、谷から谷へと移り(写真4)、有名な三重ループ線によってさらに高度を上げていきます(写真5)。
 標高2312mのアルブラ峠をトンネルで抜けると、列車はイン川の谷へ出て、終点のサン・モリッツへ到着です。サン・モリッツは、アルプスでも有数の高級リゾート地で、年間を通じて観光客で賑わっています(写真6)。また、地理の教科書で出てくる「スイスの公用語4つ」のうち、謎の言語レート・ロマン語が話されているのがこの周辺でもあります。
旅の後半ベルニナ線は、3000m級の山々が連なるベルニナ・アルプスを縫うようにして走り、その谷間に流れるモルテラッチ・カンブレナ・パリュの三つの氷河を車窓に眺めることができる景勝路線です。サン・モリッツを出た列車は、どんどん高度を上げてモルテラッチ氷河を過ぎ(写真7)、登り切ったところにラーゴ・ビアンコ(イタリア語で「白い湖」の意)が現れます。その奥に見えるのがカンブレナ氷河です(写真8)。列車は下りにはいり、しばらくすると谷を挟んで巨大なパリュ氷河が見えてきます(写真9)。
 ここから列車は下りの急カーブの連続となり、最後はイタリア側の谷へ向かって標高差1200mを三重のオメガカーブで一気に降りていきます(写真10)。谷へ降りてポスキアーヴォ駅を過ぎると、いよいよベルニナ線のハイライト、有名なスパイラル・ループが待っています(写真11)。やがて列車はスイスの国境駅カンポコローニョに着きますが、国境を越えたイタリアの町ティラノはもう間近です。ティラノからは列車を乗り継いでミラノ方面へと向かうことができます。

写真1 

写真2 

写真3  写真4 
 
写真5  写真6 
写真7  写真8 
写真9  写真10 
写真11 

< 写真1~11、1999年8月 内田順文 撮影>


                                              

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