※ 「今月の衛星画像」 2007年のテーマは 山脈 です ※

Vol.9-04    2007年04月号

ニューギニア・マオケ山脈 標高5000mに巨大な穴 

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「今月の衛星画像」で使用したデータの中には、「研究利用目的配布」で購入したデータが含まれています。
ADEOS衛星の場合、データ所有および提供は宇宙開発事業団です。MOS,MOS-1bの場合、データ所有および提供は宇宙開発事業団です。
LANDSATの場合、データ所有は米国政府、提供はSpace Imaging(R)/宇宙開発事業団です。
SPOTの場合、COPYRIGHT CNES、提供はSPOT(R)/宇宙開発事業団 です。
また、メリーランド大学のアーカイブデータを使用することもあります。

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 2007年のテーマは「山脈」です。衛星画像で世界中のさまざまな山脈を見てゆきましょう。


 グーグルアースで見られるおもしろ画像を集めたサイトや出版物が出回っているが、今月取りあげるこの場所は、残念ながらグーグルアースの今の画像(2007/4)では雲の下で見えない。赤道付近では、なかなか雲のない画像は少ないが、たまたま雲の少ないときに撮像されたデータを画像にしたものが、画像1~2である。
 赤道近くの氷河と万年雪を見たくて、初めてここのデータを画像にした。画像になった瞬間、「こんな所に巨大な火山?」と首をひねり、画像を拡大していって「どうも違うようだ」と思い、いろいろ調べると大変な場所であることがわかった。恥ずかしながらこの地に起こっている大きな問題を知らなかった。
 ニューギニアを東西に横切る山脈は、全体をマオケ山脈という。ただ、西部ではスディルマン山脈,中部ではジャヤウィジャヤ山脈、東部ではウィスムトィ山脈と分けてよぶ場合もある。画像1は、ニューギニア西部にあるインドネシアの最高峰、スディルマン山脈のジャヤ山(5030m)とその周辺地域である。赤道から南へ約400kmほどに位置する。近年の温暖化のせいか、徐々に消えかかっているらしいが、小規模な氷河も存在する(Wikipediaの英語版に1930年代と1970年代の写真が載っている)。
 さて、この地域で起こっている大きな問題とは、米国フリーポート社によるグラスブルグ鉱山の大規模な開発である。画像2にある大きな穴は、銅と金の露天掘り鉱山である。この鉱山には、労働者1.7万人と管理者やその家族など1万人の住む街があり、近代的なフリーポート社のオフィスまであるのだという。しかし、搾取するものとされるものの緊張関係は厳しく、血なまぐさい事件もたびたび起こっているという。鉱山で採掘された鉱石は水に混ぜられ道沿いのパイプで延々と山の下まで100km以上も運搬され、南岸の港から日本とスペインに向けて運び出される。世界遺産にも登録された国立公園の中での大規模な鉱山開発と、それに伴う災害や事故、環境汚染問題など、背景には巨額な資金運用や複雑な政治問題が潜んでいる。この鉱山は、20年間に120mもの高さのピークひとつをつぶしたのだそうだ。
 「インドネシア専科」というWebサイトには、ジャヤ山とグラスブルグ鉱山の現状が詳しく説明されているし、「ライラのイリアンジャヤだより」は、この鉱山の詳細なレポートが載っている。
 なお、USGSのページには、1970年代の採掘が始まる前のLandsat画像が載っている。NASAのこのページには、画像1,2と同じ画像で、この周辺の氷河が抽出されている(画像3に引用した)。また、高解像度の画像が掲載されたページもある。


図1 黄色の枠が画像の位置                      画像1 1988年2月の画像。一辺185km
画像2 画像1の拡大画像 穴の中のドリルで掘ったような模様は、壁面に沿って下へ下る道路であろう。
画像3 NASAのサイトにある画像と解説