※ 「今月の衛星画像」 2012年のテーマは 世界の三角州 です ※

Vol.14−04    2012年04月号

「メヘラーン川三角州とケシュム島」

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「今月の衛星画像」で使用したデータの中には、「研究利用目的配布」で購入したデータが含まれています。
ADEOS衛星の場合、データ所有および提供は宇宙航空研究開発機構 (旧宇宙開発事業団)です。
MOS,MOS-1bの場合、データ所有および提供は宇宙航空研究開発機構 (旧宇宙開発事業団)です。
LANDSATの場合、データ所有は米国政府、提供はSpace Imaging(R)/宇宙航空研究開発機構 (旧宇宙開発事業団)です。
SPOTの場合、COPYRIGHT CNES、提供はSPOT(R)/宇宙航空研究開発機構 (旧宇宙開発事業団)です。
また、メリーランド大学やUSGSのアーカイブデータを使用することもあります。

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 2012年のテーマは、「世界の三角州」です。衛星画像を使って、世界の「三角州」を見てまわりましょう。


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  25年近く前に、向後元彦さんの「緑の冒険 −沙漠にマングローブを育てる− 1988年、岩波新書」という本が出ました。当時、かなり話題になったと記憶しています。この本の中に、知られざる“沙漠のマングローブ”という章があり、イランのケシュム島(ケシム島)を訪れる話しが出てきます。ケシュム島の西側には、おびただしい数の砂州の島が発達しており、乾燥地のマングローブ林としては最大規模のものが形成されているそうです。ただ、その周辺は膝までもぐる泥湿地が広がっているというのです。ドバイから日本へ帰るとき、あるいはドバイへ着陸するときちょうどこのあたりを飛行機がとおりますが(地図1)、いつも外が暗い時間なので地上が見えることはありません。それでもいつかはと、チャンスをうかがっています。
 ザクロス山脈南部を東に追って行くとペルシャ湾にでます。ザクロス山脈のいくつもの山筋の間に沿う縦谷のひとつがルーデ・シュール川です(地図2、画像1)。Shur シュール は「塩気のある」という意味だというのは、前述の本にも出てくる牛木久雄さんに教わりました。ルーデ・シュール川は下流に行くとメヘラーン川という名前になるようです。手元にある日本の地図帳や、細かい地名の載っている幾つかのWebGISにもこれらの河川名は登場しません。「The Times Comprehensive Atlas of the World 」と航空地図でこの河川名を見つけましたが名称は英語などに訳す際に微妙に変わっているようで、二つの地図帳でも少し違って記載されています。
 この地域の年降水量は多くても100mm程度のようですが、雨が降ると河川は凄く増水する とこの冬にこの地域を訪れていた牛木さんが語ってくださいました。牛木さんはカル川(地図2)の上流でそのような光景を目にされたそうです。メヘラーン川の河口には三角州が形成されています。画像2では、三角州の前縁より内陸側に帯状にマングローブ林が分布する様子がわかります。対岸のケシュム島でもマングローブ林の外側に浅瀬が分布するようです。マングローブ林の前縁に広がるこの浅瀬が、向後さんの本で述べられた泥湿地に相当するものと思われます。写真1と写真2は、牛木さんが撮影したマングローブです。おおよその撮影場所は、画像2に記しておきました、

※ 地図2の河川名のカタカナ表記は、アラビア語、ペルシャ語に詳しい元JICA国際協力専門員の牛木久雄さんに教えていただきました。

地図1 グーグルアースにドバイ発成田行きの飛行経路(2012/03/17.)を重ねた。
黄色い枠は、下の画像1の範囲
地図2 The Times Comprehensive Atlas of the World  から部分拡大したこの地域の地図。
縮尺は下図のスケールを参考に 
画像1 メヘラーン川デルタとケシュム島西部の泥湿地とマングローブ林 
ところどころに見える円形をした大きな塊(濃い茶色)は、岩塩ドームだそうです。
    
1998/05/21 のLANDSAT TMデータによる(RGB:342)
画像2 メヘラーン川三角州(水路を挟んで西の部分)とケシュム島のマングローブ林(赤く表示した部分)及びその前面に広がる泥湿地。
枠は、写真1,2の撮影場所を示す。○は、Banbar-e-Khamir(バンダレ・ハミール)という町。
  2005/04/15のLANDSAT TMデータによる(RGB:_452)。
写真1 マングローブ林の遠景 マングローブは、ペルシャ語でHarra(ハッラ)という。2012/02/27 牛木久雄氏撮影      写真2  マングローブ 人物が写っているので樹高がよくわかる  2012/02/27 牛木久雄氏撮影