ロシア連邦の最西端のこの州のさらに西端を東経20°が通る．州都もカリーニングラードという．州の人口は100万人程度，その半分が州都に住む．カリーニングラード州は“飛び地”として有名だ．ここから400kmほど東にあるロシア連邦へ行くには，三回も国境を越えなければならない（地図１）．しかも，かつてこの地はドイツの飛び地でもあった．カ リーニングラードの複雑な国家の成り立ちは何かを参照してもらうことにして，ここではとりあえず衛星画像を眺めてみよう．
　画像１は，2014年3月10日に取得された最新のデータである．南・北２シーンをつなぎ合わせたが，少し手抜きをしているので色調が異なっている．画像の範囲は大部分が低地で占められている．海岸線に沿って，砂丘や浜堤に由来すると思われる微高地が，河川に沿って自然堤防に由来すると思われる微高地が見えるが画像を拡大しないとよくわからないかもしれない．カ リーニングラードやポーランドなどバルト海沿岸地域は琥珀の一大産地である．湿地の泥をホースで吸い上げ，堆積物の中の琥珀を取り分けたりして採掘することもあるようだ（http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Amber_miners2.jpg）．
　画像１でまず目に付くのはバルト海に面する長大な砂州である．サンビア半島から北側をクルシュスキー（クルシュー）湾，南をビスリンスキー湾とよぶ．北のクルシュスキー湾にはまだ海氷が漂っているようだ（画像2）．ビスリンスキー湾の砂州にあるバルチースクという港は不凍港で，バルチック艦隊（バルト海艦隊）の母港である（画像３）．サンビア半島には，何本かの筋状にたなびく煙が見える．拡大するとそこここに焼かれた耕地が点在する．春の耕作に向けての野焼きなのだろうか（画像３，４）．
　クルシュスキー湾に沿う砂州は，クルシュスキー砂州とよばれ全長約100kmにおよぶ．北半分がリトアニアに南半分がカリーニングラード州に属する．砂州の幅は400m～3800ｍと場所による差が大きい．もとはモレーンに由来する島々が連結して砂州が形成されたという．２０００年に世界遺産に登録されたが，その背景には土地の侵食や森林破壊，観光によるオーバーユース，海洋汚染などがあったようだ．近年は砂州の沖にある海上油田掘削地からの流出も懸念されているという（この段落の記述は，ウィキペディアを参照しました）．10年ほど前に書かれた次の記事もカリーニングラードの状況をよく説明している（https://www2.jiia.or.jp/pdf/newsletter/shiten/0211_kasai.pdf）．
　なお，クルシュスキー砂州に関しては，JAXAの作成した次のサイトに詳しい解説がある．http://www.eorc.jaxa.jp/imgdata/topics/2011/tp110727.html