※ 「今月の衛星画像」 2025年のテーマは 境界 です ※
 Vol.27
-09
    2025年09月号

衛星画像 リモートセンシング 

アジアとヨーロッパの境界(2) 大コーカサス山脈
 

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LANDSAT
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 大コーカサス山脈は、黒海とカスピ海の間に東西に延びる山脈で、全長は約1,100kmほどある.この大山脈は,コーカサス地域を南北に分断し、ロシア(北側)とジョージア・アゼルバイジャン(南側)との自然の国境を成しており,このことからアジアとヨーロッパの境界と言われることも多い.山脈内にはヨーロッパ最高峰であるエルブルス山(5,642m)がある(図1の範囲外,西方にある).
  地形的特徴としては,エルブルス山を中心に高峰が東西に連なり、氷河地形が発達している.山脈の北側(ロシア側)は比較的緩やかな斜面が見られるが,南側(ジョージア側)は急峻な断層崖や深い渓谷が多い.このことから南側の山麓線に沿って扇状地が連なっている(画像2,3).山脈の内部には,多数の氷河やカルデラ地形が見られ、氷河の後退に伴うモレーン堆積地形も存在している.
  南側の斜面は,第三紀以降の褶曲帯で,堆積岩(砂岩・泥岩)が多く分布し褶曲構造が発達しており,鉱物資源にも恵まれ銅や鉛,亜鉛,石油や天然ガスなどが産出する地域もある.なお,大コーカサス山脈の南にある低地や山地(アルメニア高地など)を小コーカサス山脈と呼ぶ.そして,両山脈の間を含む広い地域を「コーカサス地方」と総称する.
  大コーカサス山脈の成因には古代の海「テチス海」の存在が深く関係している.テチス海は、古生代後期から中生代にかけて,パンゲア超大陸の分裂によって形成された広大な海洋であり,ゴンドワナ大陸(南)とローラシア大陸(北)との間に広がっていた.この海洋は長い地質時代を通じて堆積活動の場となり,石灰岩やチャート,深海堆積物などが厚く積み重なっていった.
  新生代に入ると,アフリカプレートおよびアラビアプレートが北上し,ユーラシアプレートと衝突を始めた.この衝突によりテチス海は徐々に閉じられ,海底に堆積していた堆積物は圧縮されて地表に押し上げられ,褶曲し変成してアルプス,ヒマラヤそしてコーカサスといった新期造山帯の山脈が形成されることとなった.大コーカサス山脈もまさにこの過程で誕生した山脈であり,かつてテチス海の北縁にあった海底堆積帯がユーラシアプレートの縁辺で隆起したものとされている.
   
 図1 大コーカサス山脈の位置  オープンストリートマップより作成
画像1 大コーカサス山脈東部 SENTINEL2 2025年6月1日 RGB:432
楔型の暗部はデータが入手できず接合できなかった部分です
 
      
  画像2 大コーカサス山脈南麓に続く合流扇状地群 SENTINEL2 2025年6月1日 RGB:432 
 
画像3 扇状地のひとつ  SENTINEL2 2025年6月1日 RGB:432