A1  石西礁湖の衛星画像

LANDSATがとらえた衛星データを画像処理した。LANDSATは約700km上空の軌道上から、16日ごとに地上の同一地点上空を通過する。解像度は30mである。
この画像では、サンゴ礁の浅瀬が水色〜白色に見えるように処理してある。海上に点在するのは雲である。
この画像の右上の部分が、石垣島の南半分にあたる。画像の右端の部分が白保サンゴ礁である。南に開く湾入部が宮良湾、その西側に現空港がみえる。
新空港は、宮良湾の北側の台地上に計画されている。


A2  生サンゴの被覆度の変化

(財)世界自然保護基金日本委員会(WWFJapan) が実施した石垣島周辺サンゴ礁環境調査の成果。
数人の経験豊富な調査員が、一定時間泳ぎ観察結果をまとめたもの。
5年間の変化をみると、集落のない地域、例えば石垣島北端部などは、生きたサンゴの被覆度は変化無いものの、
集落に近い海域や、河川、水路などかある前面の海域では、生サンゴの被覆度が減少している。
1999年6月に、次期調査が予定されている。


A4 白保集落北側のサンゴ礁空撮
 
1993年6月撮影白保集落東方上空からみた白保サンゴ礁の北半分。海岸線の南端が轟川河口にあたる(写真には写っていないが)。
サンゴ礁の幅は写真の部分で最大になり約1キロメールに達する。いちばん外側には干潮時に離水する礁嶺がみえる。
礁嶺には何カ所かで切れて水路がつくられているが,写真の南側にイカグチ,その北方にモリヤマグチがみえる。
写真の上から1/3ほどにある陸側に向かうくびれた部分は,白保サンゴ礁北端の通路川の河口と通路グチである。
写真のちょうど中央付近の小高い丘がカラ岳である。この写真の通路グチまでのサンゴ礁海域が旧空港予定地(カラ岳東海上案)だった。


A5 轟川河口空撮

1991年8月撮影
南側から撮影した轟川河口(写真中央)付近のサンゴ礁。河口付近は陸側から流出した赤土の堆積が著しい。
特に河口の直前で屈曲する付近(ブウイキ)では,人の胸のあたりまで堆積している。河口の両側の海岸線に
沿って広がる淡い白みがかった茶色に見える部分は、藻場や後方礁原の礁石灰岩が露出する部分である。
降水後には赤土の堆積がみられる部分だが、この写真にみられる白茶色に部分が赤土の堆積そのものを示すかどうかは不明。


A6,D6,D8 水路の赤土
 
1990年8月撮影 1972年の沖縄の本土復帰以降、沖縄振興のために多額の資金が沖縄県へ投入された。
そして、農地改良事業もそのひとつである。しかし、改良されたはずの農地からは降雨の度に表土が流出するいわゆる赤土流出現象が頻発している。
この写真で見られるように、農地の間をぬうように張りめぐらされた水路によって、降雨時の赤土流出は日常化した。


A7,A8 礁嶺を歩く

1994年6月撮影
干潮時、ワタンジという高まりを伝って,海岸から1キロメートルほどの礁嶺まで,比較的簡単に歩いて渡ることができる。
そこここに広がる潮だまりでは,魚介類を採ることもでき,海辺に住む人々は戦時中でも日々のおかずに困ることはなかったという。
干潮時の前方礁原から礁嶺にかけては生きたサンゴを間近にみる良いチャンスだ。ただし,下手にサンゴの林に足を踏み入れると抜け出すことができない。

B3,B4 サンゴ礁の砂
 
サンゴ礁にみられる砂は,大部分が生物の遺骸から構成されている。この写真にはサンゴ片,貝片,ウニの棘,有孔虫殻などが写っている。
別の写真は,有孔虫のうちバキュロジプシナ(星砂),カルカリナ(太陽の砂),マーギノポラ(銭石)を取り出したものだ。
生きた有孔虫は表面の小さな空隙から偽足を出し,サンゴ礁の中で海藻にしっかりつかまりながらエサのプランクトンをねらっている。


C1,C2 アンカーとフィンによるサンゴのダメージ

 観光客によるサンゴ礁のオーバーユースの典型的な例である。もしあなたがサンゴ礁を守ろうという意志があるなら、次のことをやってほしい。
@ サンゴ礁へゆくのを止めること
A サンゴ礁を保護しているNGOへ寄附すること。


D1,D2 カラ岳と海岸からみた台風時の白波

 1990年8月撮影
台風の接近に伴ってサンゴ礁には大きな波浪が打ち寄せる。ふだんはサンゴ礁の礁嶺が自然の防波堤の役割をするので,
サンゴ礁の内側には大きな波が届かない。しかし,台風の時には数メートルを超える大波が打ち寄せることもある。
降雨による赤土の流出が著しい時には礁嶺に砕ける白波が赤く染まることもめずらしくない。


D3,D4 砂丘の決壊 
 
1990年6月撮影白保サンゴ礁に沿って砂丘が形成されている。この砂丘砂はかっこうの建材となる。
砂採り場では、海岸線ギリギリまで砂を掘っている。この写真は、台風の際に打ち寄せる波で砂丘が崩れ、
砂採り場へ海水が流れ込んできたようすを撮している。


D7 ダム下の水路

底原ダムの下流にある水路(撮影当時ダムは建設中)で撮影した。やがてこの水はサンゴの海へ流れ出てゆく。


D9,E1,E2 赤土で汚れた宮良湾と白保船着場

 1994年6月撮影
白保サンゴ礁の南端は宮良湾である。その宮良湾は沖縄でも1、2、をあらそう赤土で汚れきった海域である。
写真D9は、降雨時の降水で流出した赤土が湾内いっぱいに広がってゆくようすを撮影した。
写真E1は赤土の濁水前線が宮良湾の北方にある白保サンゴ礁の方へのびてゆくようすを撮影した。
台風時には実際に白保集落前の船着き場や白保集落北の砂採り場の海岸で濁水が確認されているので(E2)、
アオサンゴ分布域にも赤土は流れ込んでいると推定される。



E5 赤土で埋まってしまった道路  

写真左手の斜面は、農地になっている。降雨時に裸地であったため、多量の表土が流れ出し、下方にある道路を埋積してしまった。
このような出来事も別にめずらしいことではない。



E6 ぬかるみの宮良湾

 1994年6月撮影
赤土の堆積でぬかるみ状態にある宮良湾。足跡に注目。


E7,E8 サンゴの白化

 1994年6月撮影
赤土を含んだ多量の淡水がサンゴ礁へ流れ込む。サンゴと共生する褐虫藻は苦しくなってサンゴから逃げ出す。それが白化現象だ。
褐虫藻は光合成をおこなってサンゴに栄養分を分け与えてくれている。この共生藻が逃げ出せばそれはサンゴの死を意味する。


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       の写真解説

白保サンゴ礁の代表的な景観 

 1991年8〜9月撮影
サンゴ礁の内側の浅い海域を礁池(しょうち)とよぶ。礁池の中には水深が2〜3メートル程度なので,タンクを背負わなくても簡単な
フィンとスノーケルさえ身につければ簡単に観察できる。ただし,泳ぎに慣れないとフィンや身体をサンゴにぶつけてしまうので注意が必要だ。
白保サンゴ礁は,有名なアオサンゴだけでなく,見所はたくさんある。むしろ,アオサンゴが分布する場所より,ウスコモンサンゴやミドリイシ,
マイクロアトールの方が変化に富んでおもしろいかもしれない。 

マイクロアトール

 1991年9月撮影
塊状ハマサンゴは側方へも上方へも成長するが,上方への成長は低潮位の高さで止まる。
そして,上面が平坦な円筒形になったものをマイクロアトールとよんでいる。写真のものは塊状ハマサンゴからマイクロアトールになりかけたもので,
高さは2メートル程度に達している。このサンゴの成長は1cm/年程度と見積もられているので写真のものは200歳ということになる。
サンゴは海水中の二酸化炭素を固定して炭酸カルシウムの骨格を作り上げるが,その過程で海水中の様々な物質を取り込んでゆく。
たとえば水爆実験で出た放射能も取り込んでいるし,産業革命以来排出され続けている汚染物質も取り込んでいる。
サンゴは地球環境の記録者ともいえるのである。


 

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