白保の現世のサンゴ礁 日本第四紀学会発行 第四紀露頭集 1996年 所収
−サンゴ礁礁池に見られる多様な造礁サンゴ群集−
長谷川 均(国士舘大学 文学部 地理学教室) 地名:沖縄県石垣市白保地先 緯度・経度:N24°21’47”, E124°15’27”(第2ポール付近) 水深:0〜4m程度 露頭種別・現況:石垣島の東南海岸の幅1kmほどのサンゴ礁礁池、礁原からなる裾礁タイプのサンゴ礁 年代:現世 記載時期:1995年9月 キーワード:サンゴ礁、裾礁、造礁サンゴ、アオサンゴ、赤土(土砂)流入
白保サンゴ礁は、石垣島東南岸の宮良湾から東岸の通路川河口まで南北12km、最大幅約1kmにも及ぶ裾礁である。 このうち、見事なサンゴ礁生態系が観察できるのは、白保集落からカラ岳東側までのおよそ7kmの範囲である(空中写真はその南半分を示す)。 ここでは、少なくとも600年以上生き続けている、大規模なアオサンゴ(Heliopora coerulea)群落や、200〜500年程度とみられる巨大な ハマサンゴ(Porites australiensis)の塊状群落やマイクロアトールが多数(第Uポール(後述)周辺だけでも130個以上)分布する。 白保サンゴ礁で見られる造礁サンゴは30属70種以上とみられるが、海藻・海草や魚類など多様な生物も観察できる。浜辺から泳いで外洋に 面した礁嶺まで行くことも可能で、礁池−礁原−礁嶺という地形の帯状構造がよくわかる。また、干潮時には干上がったワタンジ(高まり)を 通って礁嶺まで行くことも可能だ。海上には、かつて空港建設予定地だったなごりの鉄柱(第T〜Wポール)があり良い目印になる。 しかし、安全を考えれば満潮の頃に出るサンゴ見学船(不定期)に乗り、案内人の指示に従ってサンゴを損傷しないように配慮しシュノーケ リングで観察するのが良い。船はアオサンゴ群落、ウスコモンサンゴ(Montipora foliosa)群落、マイクロアトール群やハマエダサンゴ (Porites cylindrica)群落などを巡回する。開発や水質汚濁で健全なサンゴ礁が極めて少ない現状では、白保サンゴ礁の存在価値は大きい。 しかし、近年このサンゴ礁でも陸域の開発行為で赤土(土砂)の流入が著しい。 文献: ・WWFJ(世界自然保護基金日本委員会)(1986):『白保サンゴ礁海域の学術調査報告書』、 第一次白保の海学術調査班、世界野生生物基金日本委員会(現WWFJ)、53P. ・IUCN(1988):『Shiraho Coral Reef』.231P. ・目崎茂和編(1991):『石垣島のサンゴ礁環境』、WWFJ(世界自然保護基金日本委員会)、214P. ・日本自然保護協会(1991):『新石垣空港建設がサンゴ礁生態系に与える影響』、119P. ・WWFJ(世界自然保護基金日本委員会)(1995):『白保のサンゴ礁』、48P.