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VOL27-08

2025年08月

  「火山の島:伊豆大島」

小山 拓志

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伊豆大島は都心から約120km南の洋上に浮かぶ,伊豆諸島最大の火山の島である。島の中央部には標高758mの三原山が聳え,現在も火山活動を続けている。そのため,教科書的な火山地形や火山噴出物を至るところで観察することができる。今月の地理写真では,火山島ならではの自然景観について紹介する。

   

写真1 地形・地質学者の誰もが一度は見に行きたい「地層大切断面:通称バームクーヘン」である。ここでは,古期大島層群のうちの約18,000年間,100回を超える大規模噴火の堆積物を観察することができる。露頭に触れられないのが惜しい。

   

写真2 三原山(758m)。山から垂れ下がる黒い筋は,1986年の大噴火で流れ下った溶岩流の痕である。

   

写真3 パホイホイ溶岩。安永時代の大噴火(1777~1792年噴火)で流れでた溶岩。マグマの粘り気が弱いときに,このようなシワができることがある。

   

写真4 アア溶岩。アア溶岩の表面は,このようにゴツゴツした荒れた岩塊で埋め尽くされている。この岩塊の表面はザラザラとけば立っており,これをクリンカーと呼ぶ。サンダルでホイホイ歩けるのが「パホイホイ溶岩」,アァ・・痛い痛いと言いながら歩くのが「アア溶岩」(と私は習った)

   

写真5 三原山山頂の火口。お鉢巡りをすれば,南側の火口展望所から火口の底を観察することができる。よく観察すれば,火口崖の上部に,1986年の噴火で形成された溶岩湖の断面を示す柱状節理を見つけることができる。

   

写真6 三原神社の鳥居の前にある巨岩,「アグルチネート」。マグマのしぶきがくっついてできた巨岩である。よく観察すると,大小様々な破片がくっつき合ってできていることがわかる。

   

写真7 爆発的な噴火で空中に高く飛び散った噴石が落下して,地面にめり込みへこんだ地形「ボムサッグ」。その後の侵食で周囲の地面が削られたため,このような噴石を載せた塔のような形態になっている。

   

写真8 海食崖と筆島(海に浮かぶ突起状の岩)。この筆島は,筆島火山の火道にあった硬い火道角礫岩の残骸が侵食に耐え,海中に取り残されたものである。

 
   写真1~8:2025年3月31日,小山拓志 撮影)



                                              

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